損をしない、自分に合った医療保険の選び方

ライフステージが変わったり、体調を崩したりした時に、病気や怪我で入院が必要になった場合のお金の心配が頭によぎることはありませんか。
入院した時に備える場合に、まず思いつくのは「医療保険」ではないでしょうか。

今回は、公的医療保険制度についても理解を深めつつ、それで足りない部分を補うための自分に合った民間の医療保険の選び方について解説します。

医療保険とは

医療保険とは、医療機関の受診により発生した入院費や手術費といった医療費について、その一部または全部を保険者(ここでは国や健康保険組合のこと)が給付する仕組みです。
医療保険には公的な医療保険と民間の医療保険の2種類があります。

公的医療保険制度の概要

日本は「国民皆保険」といわれており、働き方や年齢などで加入する制度が変わりますが、国民誰もが公的な医療保険に入ります。
まずは、その公的医療保険制度について具体的に確認していきましょう。

公的医療保険制度の代表である「健康保険」は、主なもので5つあります。

  1. 国民健康保険
    主な加入者:自営業者、非正規労働者、無職、74歳までの高齢者
  2. 全国健康保険協会(協会けんぽ)
    主な加入者:協会けんぽに所属している中小企業に勤務する人とその家族
  3. 組合健保
    主な加入者:健康保険組合を自前で設立している大企業や、そのグループ会社に勤務する人とその家族
  4. 共済組合
    主な加入者:公務員や私立学校の教職員とその家族
  5. 後期高齢者医療制度
    主な加入者:75歳以上の高齢者

ご自身がどの健康保険に当てはまるのか、まず確認しましょう。

医療費の自己負担割合については、「1~4」の健康保険に加入している場合は、以下の内容で共通です。

  • 義務教育就学前の乳幼児は2割
  • 小学生~70歳未満は3割
  • 70歳以上は2割(※所得が一定以上の場合は3割)
  • 「5」の後期高齢者医療制度の場合は、医療費の自己負担額は1割になります。(※所得が一定以上の場合は3割)

    高額療養費制度

    高額療養費制度とは、月の初めから終わりまでの1ヶ月間に、病院で支払った医療費が一定金額を超えた場合に、その超えた金額が支給される制度です。
    年収が多いほど自己負担額の上限が上がる仕組みです。

    例えば、医療費総額が100万円、病院への支払いが30万円(自己負担3割)だった場合、
    年収400万円の人は「80,100円+(支払った医療費−267,000)×1%」が月々の自己負担額の上限となります。
    この場合の上限は8万7,430円なので、支払った30万円のうち21万2,570円は後から戻ってきます。

    年収が約770万以上約1,160万円以下なら、「167,400円+(支払った医療費−558,000)×1%」が上限となります。
    この場合の上限額は17万1,820円となり、12万8,180円が戻ります。

    自己負担の上限が決まっていると、金額の見通しがつくので少し安心できますね。

    病院の窓口での支払いが金額的に難しい場合は、ご自身が加入する健康保険組合で支払い前に手続きをして「限度額適用認定証」を発行してもらうことが可能です。

    「限度額適用認定証」を病院の窓口に提示すると、医療費の窓口負担が自己負担限度額までの支払いで済みますので、必要な場合は早めに申請しましょう。

    多数回該当

    治療が長期にわたる人には「多数回該当」という仕組みがあります。過去12か月以内に3回以上、上限まで自己負担した場合には4回目から上限が下がる仕組みです。

    住民税を払っていて年収が770万円以下であれば、医療費の額にかかわらず上限が4万4,400円になります。

    傷病手当金

    会社員の場合は、健康保険組合から「傷病手当金」が支給されます。
    傷病手当金は、病気や怪我の療養のために会社を3日間連続して休んで、4日目以降の休んだ日から最長1年半にわたって支給されます。

    支給される金額は、「標準報酬月額÷30日」の3分の2になります。簡単に説明すると、1日あたりの給与の平均額の3分の2程度の金額と考えるとイメージしやすくなります。

    なお、自営業などで国民健康保険に加入している場合は、傷病手当金の支給はありません。

    付加給付

    「3.大企業の健康保険組合」と「4.公務員の共済組合」は、自己負担の上限をさらに下げる「付加給付」という仕組みがある場合があります。

    厚生労働省が組合に対して示している目安では、1ヶ月2万5,000円ですが、実際にはそれぞれの組合が独自に上限を定めています。
    保険適用されている医療費であれば、どれだけかかっても、自己負担額は1ヶ月2万5,000円以下で済むという手厚い給付です。

    ぜひ、ご自身の加入する健康保険組合で付加給付があるか確認してみましょう。

    子どもの医療費助成制度

    医療費の自己負担額は、基本的に義務教育就学前の乳幼児は2割、小学生~70歳未満は3割ですが、多くの自治体で子どもの医療費を助成しています。自治体によって、親の所得制限の有無、子どもが何歳まで助成されるのかに違いがあります。

    小さな子どもがいる場合は、病院にかかる機会が大人より増えるケースが多いので、ありがたい制度です。

    このように公的医療保険制度はかなり充実していますので、民間の医療保険を検討する前に、ご自身の医療費の自己負担額がどの程度で収まるのかシミュレーションしてみると良いですね。

    公的医療保険制度については、厚生労働省のHP、医療保険のページに詳しく記載されています。https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/index.html

    民間の医療保険

    民間の医療保険とは、病気や怪我で入院した場合の経済的なリスクを保障する保険になります。

    基本は、入院の2つの要素にどれだけ保障を付けたいかを考えます。そして、この保障に必要な特約をつけて加入するのが一般的です。

  • 入院日額:入院1日あたり、いくら受け取れるか
  • 入院日数:1回の入院について何日目から何日目まで入院日額を受け取れるか
  • (※最近は日帰り入院をカバーする保険も多数あり)

    民間の医療保険には、一般的に以下のような給付金や保障特約があります。

    入院給付金

    医療保険の主になる保障です。病気や怪我の治療目的で入院した場合に給付されるお金で、「入院日額×入院日数」で計算されます。

    例:入院日額1万円の医療保険に加入し10日間入院すると、1万円×10日で10万円の給付。

    どのくらいの入院給付金が必要なのかは、公的医療保険制度でカバーされない、差額ベッド代・食事代・入院生活での生活費・医療費の自己負担額を洗い出し、貯蓄などで賄えないのはいくらかを考えて決めるのがよいでしょう。

    参考までに、入院中に個室や少人数部屋を希望して利用した場合、かかる差額ベッド代の1日あたりの平均徴収額は、厚生労働省の調査によると「6,188円」となっています。

    出典:厚生労働省 平成30年11月「中央社会保険医療協議会 総会(第401回)主な選定療養にかかる報告状況」
    https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000400350.pdf

    また、入院給付金の支払い対象となる日数には上限があります。
    保険商品によって変わりますが、1回の入院あたり60日まで、120日まで、180日まで、といった選択肢があります。

    入院給付金の支払い限度日数が多くなると保険料も高くなる傾向にあります。
    以前に比べ、医療技術の発展や、医療費を抑制するための政策などにより日帰り入院も増えるなど、平均入院日数は短縮傾向にありますので、入院1日目から保障されるもので支払い限度入院日数は短めの商品を選ぶのも、一つの手になるのではないでしょうか。

    出典:厚生労働省「平成29年 患者調査」
    退院患者の平均在院日数等のうち、「年齢階級別にみた退院隊員患者の平均在院日数の年次推移」
    https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/17/dl/03.pdf

    それでも不安な場合は、七大生活習慣病に起因した入院に関しては支払限度日数が延長される商品や、がん保険や3大疾病は支払限度日数がない商品もあります。

    ただし、免責期間がある保険もあるので、注意が必要です。

    手術給付金

    病気や怪我の治療目的で手術を受けた場合に給付されるお金で、「入院日額×保険会社が定めた倍率」で支払われる金額が決まります。

    手術部位や入院が必要な手術かどうかの違いで、倍率は変わるケースが多いです。

    近年は入院せずに外来で手術を受けてそのまま帰宅する人も増えていますので、入院の有無にかかわらず給付金を受け取れる商品が安心でしょう。

    通院保障特約

    通院だけでなく、入院を伴う病気や怪我の治療で、その入院前後に通院した場合に保障されます。しかし、対象となる通院期間に制限があったり、通院すべてが対象にならなかったりする場合があるので注意が必要です。

    先進医療保障特約

    先進医療とは、高度な医療技術を用いた治療法や技術のうち、公的な医療保険の対象になっていないもので、有効性や安全性について厚生労働大臣が認め、一定基準を満たしたものです。

    公的な医療保険の対象になっていないものは全額自己負担で高額になるため、その自己負担額の一部を保障するものです。

    しかし、近年の医療技術の進歩で先進医療と呼ばれていた技術も、公的な医療保険の適用になるスピードが早くなっています。

    また、地方に住んでいる場合、先進医療が受けられる病院が通院可能範囲でない場合も多いので、それらを踏まえ保障を付けるかどうかを考える必要があります。

    生活習慣病保障特約(三大疾病・七大生活習慣病)

    生活習慣病の中でも、がん・心疾患・脳血管疾患を三大疾病と、さらにそこに糖尿病・高血圧性疾患・肝硬変・慢性腎不全を合わせたものを七大生活習慣病、と呼んでいます。
    これらの疾病の治療目的で入院した場合に、入院日額が上乗せされる・入院日数が延長されたりする保障です。

    がんに対する保障特約

    がんに特化して、公的な医療保険の対象にならない治療や抗がん剤、ウィッグ代など入院や療養費以外にもかかるお金をカバーする保障です。

    遺伝的要因によるがんのリスクが高い場合は、追加しておくと安心です。

    女性疾病保障

    その名の通り、女性特有の病気や女性に多い病気を対象にした保障です。乳がんや子宮筋腫・子宮頸がんなどの治療目的で入院した場合に、入院日額が上乗せされるのが一般的です。

    遺伝的要因による女性特有の病気リスクが高いわけでなければ、付帯しなくても十分ではないでしょうか。

    このように、民間の医療保険には公的な医療保険の適用範囲以上の手厚い保障が選べるのが特徴です。
    しかし、保険会社によって各保障の対象に違いがあるため、よく比較することが大切です。

    医療保険の選び方、3つのポイント

    これまで、公的医療保険制度と民間の医療保険について見てきました。その上で民間の医療保険の選び方には、ポイントが3つあります。

    1. 入院費用をどこまで備えたいか
      公的医療保険制度と貯蓄でカバーしきれない費用を、民間の医療保険で備えるのが基本になります。国民健康保険に加入していて貯蓄が少ない場合は、ある程度の金額を備えた方が安心ではないでしょうか。
    2. どんな保障に重点を置くか
      民間の医療保険にはさまざまな保障が特約という形が用意されています。
      しかし、すべての事態に備えようとすると保険料は高くなってしまいます。
      自分が本当に備えておきたい保障は何かを考え、必要なものだけを選びましょう。
    3. 保険期間と保険料の支払い期間をどうするか
      医療保険には、一般的に定期タイプと終身タイプの2種類があります。
      定期タイプは加入してから5年や10年など、保険期間を選びます。保険期間が来ると更新も可能ですが、更新時の年齢で保険料を再計算するため保険料は高くなります。

    終身タイプには更新はなく、加入したときの年齢に合わせた保険料を支払い続けます。

    終身タイプの医療保険に加入する場合、保険料の支払い期間は以下の2種類があります。

  • 保険料を一生涯払い続ける(終身払い)
  • 60歳まで等、払込期間を決めその年齢まで払う(短期払い)
  • 同じ保障内容で比べた場合、保険料が安くなるのは終身払いです。払込期間を設定して払う方法は終身払いに比べ保険料は高くなりますが、払込期間を過ぎれば保険料の支払いは亡くなるため、老後の保険料の負担を抑えたい場合は有効です。

    年齢が上がると病気になるリスクは高くなるため、終身タイプのものを選ぶと安心です。

    そもそも、民間の医療保険は必要か?

    公的な医療保険と民間の医療保険、それぞれの内容を見てきましたが、そもそも民間の医療保険は加入する必要があるのでしょうか。

    日本の公的医療保険制度はかなり充実しており、医療費の自己負担額が軽減される制度が多く存在しています。

    公的医療保険制度を踏まえたうえで、民間の医療保険に加入した方がよいと思われる人、しなくてもよいと思われる人の特徴をそれぞれ挙げてみましょう。

    民間の医療保険に加入した方がよいと思われる人

    以下の特徴に該当する人は、公的医療保険だけではカバーしきれないため、民間の医療保険に加入を検討してみた方がよいでしょう。

    1. 急病等に備えるための貯蓄(生活防衛資金)が十分でない人
      独身なら給料の3ヶ月分程度、扶養する家族がいれば半年~1年分程度の貯蓄があると安心と言われています。それだけの貯蓄がない、蓄えに不安がある人は検討の余地があるでしょう。
    2. 自営業者や非正規雇用、高齢者等、福利厚生や健康保険の保障が少ない人
      国民健康保険や後期高齢者医療制度では、傷病手当金や付加給付がないため保障が少なくなりがちです。
    3. 家族に遺伝要因が強い疾患で病気になった人がいる、または手厚い医療を希望する人
      ある程度遺伝要素が強い疾患者が家族にいる場合などは、その病気に自分が将来なる可能性が比較的高い場合があります。医療保険に加入できるのであれば、備えとして加入していると安心です。

    また、入院したら大部屋ではなく個室を利用することを強く希望する場合などは、その費用の準備として加入するのもひとつの手です。

    民間の医療保険に加入しなくてもよいと思われる人

    以下の特徴に該当する人は、公的な医療保険と併せて貯蓄などの備えがあれば、わざわざ民間の医療保険に加入をしなくてもよいのではないでしょうか。

    1. 急病等に備えるための貯蓄(生活防衛資金)が十分な人
      ある程度の貯蓄があり、急病等でかかった医療費を支払う余裕があるのであれば、民間の医療保険に加入する必要性は低くなります。
    2. 公務員や会社員で、福利厚生や健康保険組合の保障が手厚い人
      会社の健康保険組合から付加給付や独自のお見舞金制度がある場合は、自己負担額が軽減されます。
    3. 家族に遺伝要因が強い疾患で病気になった人がいない、または手厚い医療を希望しない人
      家族に遺伝要因が強い疾患で病気になった人がいない場合や、万が一入院しても大部屋で問題なく、公的な健康保険の保障範囲内の治療が受けられれば良いというのであれば、民間の医療保険に加入する必要性は低くなります。

    加入のタイミング

    民間の医療保険を検討する時に大事なことは、「健康なうちに加入する」ということです。持病や病歴があっても加入できる保険もありますが、入れる保険に制限があったり、保険料が高くなったりします。

    ライフステージなどの変化で加入や見直しを検討する人が多いかと思いますが、入ると決めたら早めに手続きしましょう。

    まとめ

    民間の医療保険を検討する際は、まず自分が受けられる公的な医療保険制度(高額療養費制度・傷病手当金等)を知りましょう。

    その上でご自身の貯蓄などの備えをもっても不足する部分をカバーするために、民間の医療保険に加入するという意識を持つことです。

    民間の医療保険を検討するときは、まず、どんなことに備えたいかという目的をはっきりさせます。自分が不安に思っていることを書き出して、その不安を和らげる保障を検討することも良いですね。

    そのうえで、自分にとって何か一番必要な保障か整理し、優先順位を考えて加入しましょう。保障の内容を手厚くすればするほど安心感が増えますが、その分保険料も高くなりますので、バランスを考える必要があります。

    民間の医療保険は、一生涯加入が必要なものではありません。保険より貯蓄が十分あれば病気や怪我にも備えられますし、その他生活する上での不足の事態にも備えられます。

    健康に気を付けつつ、現金と民間の保険で上手に保障のバランスをとり、安心して過ごしていけるようになると良いですね。

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