家を持つ際に生じる「火災保険は何をいくらかければいいの?」という疑問。
家の種類や住んでいる地域によって必要な補償や金額が異なるため、単純にいくらかければ安心と言えるものではありません。
住まいの環境に合わせて、あなたに合った火災保険の選び方を見ていきましょう。
火災保険の補償範囲はどこまで?
火災保険とは、文字通り住まいが「火災」の被害にあった時に損害を補償する保険です。
また保険特約を付けることによって、火災だけでなく風災、雹(ひょう)災、雪災、水災などの自然災害や水漏れ、盗難、破損・汚損など事故的な被害も補償されます。
これらは必要に応じて、全て補償対象にすることも一部だけを組み入れることもできます。
火災保険の大まかな補償内容は次の通りです。
災害・被害 | |
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自宅内での発火・失火だけでなく、放火や近隣からのもらい火による損害も補償されます。 | |
雷による火災や損傷、電気系統の損害などが補償されます。 | |
ガス漏れによる爆発、カセットコンロの破裂などが補償されます。 | |
台風や暴風による屋根などの損害が補償されます。 | |
雹による屋根や窓ガラスの破損などの損害が補償されます。 | |
豪雪による家の損傷や、雪崩による損害などが補償されます。 | |
台風や豪雨による洪水・高潮・土砂崩れなどによる損害が補償されます。 | |
給排水設備の損傷による浸水や、他の家からの水漏れによる水濡れなどの損害が補償されます。 | |
盗まれた家財、盗難伴う鍵や窓ガラスの損傷などが舗装されます。 | |
自宅内で起きた事故による損害を補償します。 家財が対象の保険であれば、家具の移動中に誤って壁に穴があいてしまった、テレビが倒れて壊れてしまった、といった時なども補償されます。 |
注意しなければならないのは、地震や火山の噴火による被害です。
地震に起因する火災、液状化や津波などの水災、噴火に起因する家屋の損傷などは火災保険の対象外のため、別途地震保険に加入する必要があります。
地震保険については後ほど説明します。
火災保険の保険金額を決める4つのステップ
ステップ1:保険の対象を決める~保険の対象は大きく2つ~
火災保険の対象物は「建物」と「家財」の2つに分類されます。
火災保険では、どちらか一方だけに加入することも、両方をセットにすることも可能です。
ただし賃貸の場合は「家財」のみ加入できます。
建物
対象は住まいの基盤である「家屋」だけではありません。
屋外に付属している車庫や物置、門・塀・ポストなども建物に含まれます。
また建物内に取付けられた流し台や浴槽、屋根上のソーラーパネルなども建物に分類されます。
一方で、所有敷地内にあっても自動車や別棟の建物などは対象外です。
家財
対象の建物に収容しているタンスやテーブルなどの家具、冷蔵庫や洗濯機などの家電、衣服等、日常生活に用いる動産(建物に付いておらず、動かせるもの)のことを指します。
また特約をつけた場合に、宝石などの高額な貴金属や通貨なども補償対象になります。
ただし家財の対象であっても、建物外に持ち出しているときに損害を受けた場合は、火災保険の対象とはならないため注意が必要です。(携行品特約がある場合もあります。)
また有価証券や電子マネー、ペットなどの生き物、パソコン内のデータなどは家財の対象外です。
ステップ2:家の構造で保険料が変わる
火災保険は、家がどのような構造になっているかで保険料が変わってきます。
これは構造によって火災の被害状況が異なるためです。
木造、コンクリート造、鉄骨など建物の種類や耐火性の違い、さらに一戸建てか、マンションなどの共同住宅かを基準に、「M構造」「T構造」「H構造」の3種類に分かれます。
これらは、建築確認申請書や不動産取引の書類などで確認することができます。
保険料率は「M構造」<「T構造」<「H構造」の順で高くなります。
申告した構造と実際の構造が異なると、最悪の場合、万が一の際に保険金が支払われません。しっかりと確認し、虚偽なく申告をしましょう。
ステップ3:保険金額の設定
保険金額とは、損害が発生した際に支払われる「損害保険金」のことです。
発生した損害金額は実費(実際に損害を受けた金額分)で支払われ、契約時に定めた保険金額が上限となります。
そのため、保険金額を高くすれば支払われる上限も上がりますが、その分保険料も高くなります。
また保険金は損害の実費分の支払いのため、最も被害を受けた場合の想定損害額より高額な保険金額を設定しても支払われるのは実損害額までになります。
想定される損害額と支払う保険料とのバランスを考え、どのくらいカバーするかを適切に判断しましょう。
「建物」と「家財」それぞれの保険金額を設定する必要があります。
建物の保険金額の決め方
建物の保険金額においては、「新価」と「時価」という2つの考え方があります。
それぞれ、建物の価値の決め方が違います。
再調達価額ともいい、“今その建物を新たに建てるとしたら、いくらかかるか”を基準に判断する価格です。
新築住宅は計算がしやすいですが、中古住宅、マンションなどは建築費がわからないケースがあります。
その場合は建物の種類により算出方法がいくつか存在しますが、基本的には保険会社などが算出してくれます。
●時価
新築時にかかった費用から、現在に至るまでの経過年数に応じた価値を減らして判断した金額です。消耗や経年劣化などの老朽化を考慮します。
火災で建物が全焼した場合など失った建物を再建する際、時価だと新たに再建する費用の全額は支払われません。
最近は「新価」で保険金額を決めることが主流のようです。
家財の保険金額の決め方
失った家財を今買ったらいくらになるか、という「新価」(再調達価額)の考え方で保険金額を決めていきます。
家財は建物と違い複数あるため、合計の保険金額を出して契約します。
算出方法には、以下の2通りがあります。
自宅にある全ての家財を一つ一つ確認し、金額を正確に求める方法です。
非常に大変な作業で時間もかかるため、一般的ではありません。
●簡易評価
世帯主の年齢と家族構成に基づく家財の合計金額の目安で簡易的に決めるものです。
総務省の家計調査を基に保険会社が提供しています。
保険金額は、算出された金額を必ず設定しなければならないというものではなく、あくまで目安です。
試算結果をもとに、ご自身で希望する保険金額を決定することができます。
なお、高額な貴金属などを特約で組み入れる場合は、個別で申告する必要があります。
ステップ4:保険期間の設定
補償内容、保険金額を決めたら、保険期間を設定します。基本的に1年単位で、最長10年まで契約できます。
長期での契約ほど保険料が安くなるため、転居の予定がない場合などは、長期での契約を検討しても良いかもしれません。
なお、契約期間が満了したら、その都度更新となります。
自動継続特約に入っていれば手続きは不要ですが、それ以外の場合は手続きが必要です。
同じ保険を継続する場合も、補償内容や保険会社を変える場合も、無保険期間が生じないよう注意しましょう。
ここまで、火災保険の保険金額の算出方法を見てきました。
各保険会社のHPでは、上記までの情報でおおよその保険金額と保険料を試算することができ、おすすめのパッケージプランが提示されます。
もちろん、提示されたプランにそのまま加入することもできますが、保険料をもう少し抑えたい、もしくはもう少し補償を手厚くしたいなど、各々状況は違います。
ここからは、よりあなたに合った保険を選ぶ方法を見ていきましょう。
あなたに合った保険を選ぶ方法
家の種類・住環境で必要な補償が変わる
一口に「家」といっても、家の所在地や立地、建物構造などにより想定されるリスクは異なります。
リスクに応じて必要な補償、不要な補償を判断することで、あなたにあった無駄のない保険を作っていきましょう。
いくつか例を見ていきます。
一戸建ての例
- 水害リスクの有無
一戸建ての場合、家の立地条件から水災の補償の必要性が変わってきます。
低地や、川や海に近い場合、水災補償は必須です。
高台にあっても、崖の側など土砂崩れの恐れがある地域は、水災補償が必要になってきます。また、最近では河川から離れていても、ゲリラ豪雨によって下水が溢れて浸水するという都市型の水害も増えてきています。
お住まいの市町村のホームページなどに掲載されている水害ハザードマップや土砂災害警戒地域を確認し、自宅の災害リスクを確認しましょう。 - 雪害リスクの有無
降雪が少ない、ほとんどない地域では雪害補償は不要な場合が多いでしょう。 - 盗難リスクの有無
一戸建てはマンションなどに比べると盗難リスクが高い傾向があります。
人通りが少ない地域などでは、家財に盗難補償をセットしておくと、万が一の際に安心でしょう。
マンションの例
- 水害リスクの有無
マンションの中・高層階の場合、浸水のリスクはあまりないと考えられるため、水災保障は外すというケースも多いようです。
ただし、給排水設備の破損や上階からの水漏れによる水濡れの被害は想定しうるため、水濡れ補償は加入しておくと安心です。 - 風災の有無
突風や竜巻などが発生した場合、高層階では外部から飛んできた物がぶつかり、窓ガラスなどが割れるというリスクがあります。
周りに風をさえぎる建物が無いなどの場合、風災補償をセットしておくと安心です。
補償の有無は各々決めることができ、それに合わせて保険料が変わっていきます。
補償を増やせば保険料は上がり、補償を外せば保険料は下がります。
補償の要不要は、自分の状況に照らし合わせてしっかり判断しましょう。
最後にもう一つ、加入の有無を決めなければならないものがあります。
それは「地震保険」です。
ここからは地震保険について見ていきます。
単独では加入できない地震保険
地震保険とは、火災保険では補償されない地震や津波、噴火に起因する損害を補償する保険です。
加入は自由で途中加入もできますが、地震保険単独での加入はできず必ず火災保険とセットで契約をします。
保険金額や保険期間は、セット加入した火災保険とは異なります。
地震保険の保険金額
地震保険の保険金額には制限があります。
火災保険の30~50%の範囲内で、建物5000万円、家財1000万円が上限となります。
さらに、実際に受けた損害額が実費で支払われる火災保険とは違い、地震保険は被害状況によって支払われる損害保険金額が変わってきます。
2017年1月1日の契約以降、被害の大きいほうから 「全損」「大半損」「小半損」「一部損」とされています。
それぞれの損害保険金額と判断状況は以下です。(地震に起因する場合)
建物 | ・建物の主要構造部(土台や柱、壁など)の損害額が、時価額の50%以上の場合 ・焼失もしくは流失した部分の床面積が、建物の延床面積の70%以上の場合 | ||
家財 | ・損害額が、保険対象である家財全体の時価額の80%以上の場合 | ||
建物 | ・建物の主要構造部の損害額が、時価の40%以上50%未満の場合 ・焼失もしくは流失した部分の床面積が、建物の延床面積の50%以上70%未満の場合 | ||
家財 | ・損害額が、保険対象である家財全体の時価額の60%以上80%未満の場合 | ||
建物 | ・建物の主要構造部の損害額が、時価の20%以上40%未満の場合 ・焼失もしくは流失した部分の床面積が、建物の延床面積の20%以上50%未満の場合 | ||
家財 | ・損害額が、保険対象である家財全体の時価の30%以上60%未満の場合 | ||
建物 | ・建物の主要構造部の損害額が、時価の3%以上20%未満の場合 ・建物が床上浸水もしくは地盤面より45cmをこえる浸水を受け、建物の損害が全損・大半損・小半損に至らない場合 | ||
家財 | ・損害額が、保険対象である家財全体の時価の10%以上30%未満の場合 |
地震保険の保険期間
地震保険は1年単位で最長5年間契約できます。
火災保険とは最長期間が異なるため、別に更新をする必要があります。
地震保険は、火災保険に任意で追加し地震や噴火、津波などに起因する損害を補償する保険です。
「災害大国」ともいわれる日本では、いつ地震などの災害が起こるかわかりません。
地震保険に加入しておけば、万が一の際に安心ではないでしょうか。
保険料を抑えるコツをご紹介!
保険料を抑えるには
ここまで保険の補償内容や、組み合わせ例を見てきました。
火災保険は各々プランニングすることができるため、保険料も人それぞれです。
補償を手厚くすれば保険料は上がり、補償を抑えれば保険料は下がります。
そのことを踏まえた上で、最後に保険料を調整する方法を見ていきましょう。
その(1):保険期間を長くする
「保険期間の設定」の項目でも説明した通り、保険期間を長くするほど割引率が高くなるためです。
その(2):免責金額の設定
損害が発生した際に、一定の額までは自己負担をするという金額のことです。
例えば免責金額3万円の契約で、10万円の損害が発生した場合、保険会社からは7万円が支払われます。3万円は自己負担というわけです。
この免責金額を高くするほど保険料は抑えられます。
その(3):家財保険金額を少なくするorなくす
一人暮らしや子供がいない場合など、家財がそれほど多くないという家庭もあるかもしれません。その場合、家財補償の金額を低めに設定する、思い切って補償を外すという選択もあります。
その(4):耐震・耐火構造にする
これから家を買う予定という方は、耐震性・耐火性に注目して選ぶことで保険料を抑えることができます。
例えば、コンクリート造の共同住宅であれば、火災保険の建物の構造は保険料率が一番低いM構造になります。
また、耐火性を証明する書類を提出することで地震保険の割引制度が適用されます。
最後に
あなたにピッタリな火災保険の選び方を見てきました。
補償内容や保険金額、保険期間を決めたら、あとは保険会社を選ぶのみです。
保険会社によって、特約やサービスが異なります。
あなたに必要な補償内容を把握できていれば、シミュレーションを元に保険料で比べたり、各保険会社の独自サービスを比べたりしながら、自分に合った火災保険を選ぶことができるでしょう。
ぜひ納得のいく保険を選んでください。